Blind Spot =5=
「美桜、性格悪い……」
「見ていられない? じゃあ、目隠ししてあげようか?」
言いながら、今度はベッドのヘッドボードからアイマスクを取り出す。
あ、これも別にえっちなことに使うためのものじゃない、世間とは少し睡眠時間にズレのあるあたしが、日が高くなってもゆっくり寝ていられるようにって使ってるもの。
……て、誰に言い訳してるんだか。
「ほぉら、もう何も見えない」
きれいな顔に目隠しされて、素っ裸で横たわってる直人、むちゃくちゃそそる。
あたしって、やっぱりSの素質があったのかも。
「美桜ぉ……」
ちょっと不安そうな声を出す直人も思い切りツボだ。
あたしは、ゆっくりローションを伸ばしながら、彼のいろいろなところに触れていく。
敏感な乳首も、感じやすいわき腹も、贅肉のない下腹部も、焦れったいくらいに優しくマッサージしてあげる。
目隠しのまま、頬を紅潮させて、口を半開きにした直人は、男なのに色っぽかった。
無防備に脱力した身体の真ん中で、ソコだけ激しく自己主張しているのが面白い。
「直人のココってさあ、すごいえっちな形だよね」
思う存分、全身への愛撫で焦らしに焦らしたあとで、おもむろに顔を近づけた。
息が触れると、直人の腰が跳ね上がる。
「太くて、大きいの……誰かと比べたことある?」
「あるかよ、そんなこと」
「嘘だあ、部活動やってたんでしょ、合宿とかで一緒にお風呂入ったりしたとき、感心されなかった?」
別に、直人のイチモツが他人から賞賛されていようがいまいが、関係ない。
ただ単に、彼の羞恥心を煽ってみたいだけで言っている。
「ほら、この棹がすごく太いでしょ、ごつごつしてて男っぽい。それで、ここから……」
言いながら、人差し指と親指で作った輪で、棹の部分をゆっくりと扱く。
舌を伸ばして、括れの裏側をちろりと舐め上げると、それはびくびくと脈打ってさらに反り返った。
「あっ、はぁうっ」
「笠の部分との差がね、大きいの。この括れがね、あたしの襞に引っかかるでしょ、そうするとね、すごぉく気持ちがイイんだよ」
これはホントだ。
直人の怒張が熟れた肉壁に擦れると、蕩けちゃうくらいイイ。
いつまでもこのまま繋がっていたいって思う。
「こんなに素敵なの、滅多にないよ。ソープ嬢のあたしが言うんだから間違いない」
決して可愛いとはいえない形のものなのに、ものすごく愛しい。
商売柄、男性のココは飽きるほど見てきたはずだけど、自分の心にこんなにも愛しさを湧かせるのは、直人のコレだけだ。
「あぁん、もう……また食べたくなっちゃった」
先端だけを口に含んで、崖の部分をレロレロと舐め回す。
それから、徐々に奥までソレを飲み込んでいく。
どうしようもなく身体が疼いて、あたしは彼を咥えたまま、バスローブの紐を解いてそれを脱ぎ捨てた。
「んん、美桜……」
切なげな声であたしの名前を呼ぶ直人が愛しくて堪らない。
今日、直人はほとんどあたしに触れてない。
なのに、あたしの泉からは、滾々と蜜が湧き出て止まらない。
今だって、直人が欲しくて滴るくらいに濡れている。
「あふっ、もうだめ、直人……っ」
我慢できなくなって口を離すと、ちゅぽんっと音を立てて怒張が飛び出した。
そのまま上から腰を落とそうとしたあたしの手を、不意に直人がつかんだ。
上半身を起こした彼が、もう一方の手で、むしるように目隠しを取る。
「直人……?」
心持ち眉を顰めた直人の顔は、何かを我慢しているようにも見える。
でも、どうしたの、と聞く前に、片腕を背中に捩じ上げられ、あたしは顔からうつ伏せでベッドに倒された。
「あっ、や……っ、何?」
いきなりのことで驚いているうちに、両方の手首を合わせて彼の手で拘束される。
彼の手のひらは、難なくそうできてしまうくらいに大きい。
「ごめん、美桜……でも、俺ももう限界」
言うなり、バスローブの紐で後ろ手に縛られる。
肩で身体を支え、お尻だけを彼の方に突き出した淫らな体勢。
直人の前で、こんな格好を取らされたのは初めてだ。
「即興でも、結構できちまうもんだな」
背中で、直人が苦笑する。
確かに、見事な手際だった……て、感心してる場合じゃない。
「や、直人……止めてよ、変な真似しないで……」
手のひらが、お尻のふくらみを優しく撫でている。
身体を起こしたい、だけど、後ろ手に縛られたこの姿勢では、肩が少し持ち上がるくらいで、自分の身体なのに全然思うように動かない。
それどころか、動こうともがく度に、腰の辺りだけが無味にうねってしまう。
まるで……早く犯してくれと誘うみたいに。
「変な真似? よく言うよ、お客に求められれば、どんな格好だってしてやるんだろ?」
聞いたこともないような冷たい声だ。
彼は今、どんな顔をしているんだろう。
「お客の言うことなら、なんだって聞くんだろ、誰のモノだって喜んで咥えるくせに」
屈辱的な台詞だった。
あたしはソープ嬢だ、そう評されることには慣れてる。
というより、そんな言葉にいちいち悔しがったり落ち込んだりしていたら、続けていられない仕事だから、聞かないふりをしてやり過ごす術を身に着けた、と言った方が正しい。
でも、それを直人に――大好きな人に――言われるのは、辛い。
彼なら、口が裂けても、そんな言葉を投げたりはしないだろうと思っていたから。
「お願い、そんな風に言うのは止めて……」
直人は黙っている。
お尻を撫でていた彼の手が、括られた手首に触れる。
少し熱を帯びた手のひら。
それがまるで最後の拠り所のように、あたしは不自由な手で彼の指先を握り締めた。
つづく


2016年08月29日 Blind Spot トラックバック:0 コメント:0