Blind Spot =4=
直人が、あたしの首筋に顔を埋めて、荒い息を吐く。
彼が果ててしまったあとも、あたしは、しばらく彼の首に抱きついてじっとしてた。
そうしているうちに、彼のモノが徐々に小さくなって、ゆるゆると抜けていく。
あたしの中から、彼の吐き出したものとあたしの溢れさせたものが混じった生暖かいものが流れ出て、内腿を濡らした。
「美桜……」
直人の手が、ゆっくりとあたしの髪を撫でる。
「すげえ可愛いのな、美桜のイク顔」
「……バカ」
額に額をぶつけて、それからそっと軽く触れるだけのキス。
事が終わったあとの、こういう甘い時間も好き。
「美桜、俺さ……」
「うん?」
「……やっぱ、いいや。何でもない」
「変なの」
変で悪かったなって直人は苦笑いしたけど、何かを言いかけたときの彼は、何だか少し寂しそうに見えた。
でも、あたしがそれを尋ねる前に、彼はあたしの脇に手を入れて立ち上がらせ、伸ばした手でシャワーのコックを捻った。
「きゃっ」
温かいお湯が、頭から降り注ぐ。
直人はあたしの腰を抱き寄せると、悪戯っ子のような顔になって、言った。
「今度は俺が洗ってやるよ、美桜もべとべとだろ?」
「んもぅ、直人のえっち」
軽く睨みながら身体を捩ると、彼は可笑しそうにくつくつと声を上げて笑った。
さっきの寂しそうな表情は、あたしの見間違いだったんじゃないかって思うくらい、屈託のない笑顔だった。
「ああ、なんか喉渇いたな」
タオルを腰に巻いた格好で、ベッドの端に座った直人が言う。
もう1枚のタオルで、濡れた頭をごしごしと拭ってる。
きゅっと筋肉の浮いた二の腕とか、がっちりした胸板が男らしくてカッコいい。
「何か飲む?」
「うん、冷たいものが欲しいかな」
「かしこまりました。今お持ちしますので、しばらくお待ちください」
バスローブを纏ったあたしがおどけて頭を下げると、まだやるのかよ、と直人は笑った。
キッチンに行って、氷を入れたグラスにウーロン茶を注いだ。
ホントはお風呂上りだからビールが美味しいだろうけど、直人は未成年だし。
こういうときは、彼が年下だってこと、ちょっと意識しちゃったりする。
「はい、お待たせ」
「サンキュ」
喉が渇いたという言葉の通り、直人はグラスを受け取ると、中身を一気に飲み干した。
上下に動く喉仏。
それがまた、彼が男性であることをことさらに意識させて、胸の奥がきゅんとなる。
「俺の顔に何かついてる?」
見つめるあたしの視線に気づいたのか、怪訝そうな顔で直人が聞く。
「う、ううん……何でもない」
まさか、あんまり男っぽくて思わず見惚れてました、なんて言えるわけない。
直人は、両腕を上げて大きく伸びをすると、そのまま仰向けでベッドに倒れこんだ。
「おいで、美桜」
寝転がったまま直人が言う。
あたしは、グラスに残った氷を前歯で咥えて、彼の身体を跨ぐようにして膝をついた。
「……」
何も言わず、彼の喉元から胸、鳩尾の辺りへと、咥えたままの氷を滑らせる。
「ん、あぅ……」
冷たいのか、直人の背中がぴくっと反る。
なんか、こういうのもSっぽくてイイかも、すごく興奮する。
でも、直人の体温で温められた氷は、お臍にたどり着いたところで溶けてしまい、あたしはその小さな窪みにちゅっと口づけてから、言った。
「ねえ、マットプレイは無理だけど、ローションで気持ち良くしてあげようか?」
してあげようかと聞いておいて、直人の返事なんか待たずにボトルを取り出す。
別にえっちなローションじゃない、一応、自分の身体を商売道具にしてるあたしにとって、お肌とボディのお手入れには欠かせない、マッサージ用の普通のボディ・ローションだ。
焦らすように、つつっとそれを肌に垂らすと、またしてもぴくぴく反応してくれる。
もう、可愛くて可愛くて、気が狂いそうになる。
「あ、……ヤバイ」
ボソッと言った直人の視線の先を振り返ると、タオルがしっかりテントを張っていた。
偉いぞ、直人。
そうだよ、男はこうでなくっちゃ。
「タフだねえ……直人、硬派そうな顔してホントにえっちだよね」
わざと意地悪く言うと、言葉攻めされる女の子みたいに真っ赤になる。
これじゃあ、もっと苛めてくださいって言ってるようなものだ。
「こんなに勃っちゃって、恥ずかしくないの?」
「そ、そりゃ、…恥ずかしいよ、俺だって……でも、仕方ないだろ」
「そうだよねえ、こんなの見せ付けられたら恥ずかしいよねえ」
はらりとタオルを取り去ると、そこには、まさに垂直を向いて立ち上がった直人のモノ。
もう堪らないといった様子で、直人が顔を背けた。
つづく


2016年08月28日 Blind Spot トラックバック:0 コメント:0