例外のかたまりのくせに =3=
「キツイよ、藍……ホント、たまんないよ、最高だよ……」
蒼はあたしを抱えるようにして、下からがんがん突いてくる。
自分の体重が全部アソコにかかって痛いような苦しいような、でも全然嫌じゃない。
揺さぶられて、突き上げられて、あたしは、酸素不足の金魚みたいにぱくぱく喘いだ。
「好きだよ……」
甘い声で囁きながら、蒼はあたしの最奥を抉り、その瞬間に息を詰める。
「ああっ、あっ、ん、…あたしも好き、大好き!」
どくどくと迸る精を身体の真ん中で受け止め、叫び、ついにはあたしも意識を手離した。
蒼は、またたびに酔った猫みたいにふにゃりとしたあたしの身体をベッドに横たえる。
あのあと、シャワーを浴びながら1度、バスタブで1度、イかされた。
それだけでもうくたくただったけど、蒼にはまだまだ許してもらえそうもなかった。
だって蒼は、あたしの耳のうしろから首筋を通って肩先までをねっとりと舐め上げ、にやりと笑ったから。
「蒼……忙しいのにタフだね」
思わず呟いたのは本音だ。
アイドルである彼に課された過密なスケジュールを考えれば、それこそへとへとになっていてもおかしくない。
こんなことって言ったら立つ瀬がないけど、ホントに、えっちなんかで体力消耗して大丈夫かなって思う。
「まあね、何つーか俺、さかってるからさ」
「またぁ、だからそういう品のない言い方は――」
言いかけた唇を、人差し指で塞がれる。
「アイドルらしくないから、やめろって?」
「う、うん……」
「上品ぶったって、カッコつけたって、やることは一緒だろ」
「それは、そうだけどぉ……」
口元を尖らせたあたしにちょっと苦笑して、蒼は額にかかった前髪をさらりと払った。
本当に、どんな仕草をとって見ても様になるのだから憎らしい。
「だからさ、藍は例外なんだって」
蒼は、薄い唇を形良くほころばせて、言う。
「アイドルなんて肩書きや体裁かなぐり捨てて、本性曝け出せるのは藍の前だけ」
「あたし、だけ……?」
「俺ね、藍といると寛げるし、気も緩む、マジ、超がつくくらい落ち着ける、素に戻れる」
「でも、……あたしなんか、本当にただ『いる』だけだよ、蒼のためにできることなんて何もないし……」
「だからいいんだ、器用に何でもできなくていい、笑顔や声で、俺を癒してくれればいい」
そう言って、彼はあたしにキスをした。
はじめは啄ばむように軽く、そしてだんだん激しく、探るように深く……。
そろそろ時間だ、支度しろって桂木さんから蒼に電話があったときも、あたしたちは愛し合ってる最中で。
慌てて起き上がって脱ぎ散らかした服を着て、ドアのところで名残を惜しむように何度も口づけた。
またしばらくは会えないかも知れないけど、これでもう1度頑張れる。
蒼のこと、信じて待っていられる。
飛び切りの美人でもない、ものすごくスタイルが良いわけでもない、抜きん出た何かがあるわけでもない。
でも、平凡で、何の取り柄もなくて、どこにでもいる普通の女の子を、蒼が好きでいてくれるなら。
あたしは、例外のかたまりであっても構わない。
男の子が、好きな女の子に使う「例外」って、そんなに悪い意味じゃないよ、きっと。
= fin =
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2017年04月02日 8 Titles トラックバック:0 コメント:0