Addicted To You 番外(季節イベント・キリリクなど)
こちらは、太陽×柚月番外です。
サイト時代の季節イベントやキリリクを集めています。
お話はすべて、掌編~中編の読みきりになっていますので、お気軽にどうぞ。
作品の一部に性描写があります(

)。未成年の方・嫌悪を感じる方は、ご注意ください。
■ 誓い
1 2 3 4 
神様の前で誓ってもいい。あたしは、あなたに付いて行きますって。(柚月視点)
(2,500,000打キリリク)
■
Jealousy 1 2 3 
ライバル出現? いつになく曖昧な柚月の態度に太陽は……。(太陽視点)
(700,000打キリリク)
■
when I'll be a grown up 1 2 ずっとずっと憧れだった人。いつか僕が大人になったら……。
(600,000打キリリク)
■ 星に願いを
1 2 3 4 5 6 7
8 太陽シスター・星香さんと真面目一辺倒な旦那様のお話。
(某サイト様との相互リンク記念リクエスト)
■ 先生とあたしの記念日デート
1
2 3 4 お付合いを始めて半年。太陽と柚月の記念日デートは遊園地へ。(柚月視点)
(読者様へのお誕生日プレゼント)
■
sting 1 2 3 4 5 6 7
8
9 
つまらないことで先生と喧嘩。でも、絶対に謝ったりしないんだから。(柚月視点)
(
200,000打キリリク)
■
stare 1 2 3 4 5 6 視線って、感じると思いますか?
柚月との出会いから補習までの日々を、太陽の回想で。
(
22,222打キリリク)


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2012年09月21日 Addicted To You 番外 トラックバック:- コメント:0
stare =1=
「ね、先生」
「ん?」
僕と柚月は、僕の部屋のリビングのソファに並んで座ってテレビを観ていた。
柚月の好きな旅番組だ。
どこか外国の情緒ある街並みが、静かな音楽とともに美しく映し出されている。
行儀よく並んだ石畳がきれいだった。
彼女は最近、どこか遠くに行きたいな、とよく口にする。
「視線って、感じると思う?」
「視線?」
今回も、てっきり画面に映っているような街に行きたい、みたいなことを言うと思っていた僕は、全く予想外の事を聞かれて少し戸惑った。
「うん。感じると思う?」
「何だよ、いきなり」
「明日のね、LHRの議題なの」
「ああ? 何でそんなものをクラスで話し合わなきゃならないんだ」
「知らないよ。いつの間にかそういうことになってたんだもん。ねえ、感じると思う?」
「そうだなあ。感じる、とは思うよ」
肯定の答えが聞けて嬉しかったのか、柚月は瞳を輝かせて身を乗り出した。
「感じたことあるの?」
「うん、まあ……」
「どんな感じ? 聞かせて聞かせて」
「ええ? 嫌だよ、照れ臭いし」
「いいじゃん、あたし聞きたぁい」
今の柚月、僕のワイシャツの腕の辺りを両手で掴んで、上目遣いで。
完全に「おねだりモード」。
こういう顔されちゃうと、断れないのが惚れた弱みってヤツで。
「わかったよ。じゃあ、聞かせてやるけど、その代わり絶対に笑うなよ」
「うん、約束する」
ニコニコしながら頷いた柚月に、僕は小さく嘆息した。
* * * * *
退屈だった。
今日は、僕の勤める「私立明慶学院大学付属高等学校」の入学式。
学院長の長ったらしい訓示に始まって、都議やら区長やらどこかの企業のお偉いさんやら来賓方の似たような祝辞が延々と続いている。
講堂の壇上、教師席の端っこに座った僕は、思わず欠伸が出そうになって、それを慌てて噛み殺した。
中堅より上のベテラン教師ならまだしも、赴任2年めの若造の僕には、そういうことは許されない。
わりと年功序列の厳しい世界だ。
チク。
頬っぺたの辺りに、何かを感じた。
虫でも止まったかな。
さり気なく手を触れてみるけど、別に刺されたわけでもなさそうだ。
チク。
あ、また。
どうやら虫じゃないようだ。
何だろう? 気持ち悪いな。
チクチクチクチク。
あ痛たたたっ。
あー、もう絶対に気のせいじゃないし。
何なんだよ、これっ?
こうなったら、何が何でも正体を見極めてやる。
今度「チク」っと来たときがチャンスだ。
チク。
来た!
僕は素早く顔をそちら――何かが飛んできたと思われる方――に向けた。
そこで僕が見たものは。
新品の制服に身を包み、緊張した面持ちで並ぶ新入生の顔、顔、顔。
みんなおんなじ顔に見えて、ちょっと不気味な光景だった。
でもその中で、慌てて顔を伏せた生徒がいたような気がした。
確かにそうだったと言い切れる自信はないけど。
もしかして、見られてた……のかな。
チクチクしたのは視線か?
だからといって、この僕の何を見てたんだ。
5月で24歳になる僕。
教師の中では若い方。
しかも独身。
なのに生徒からは不人気。
なぜなら、自分で言うのもなんだけど、僕の風貌が冴えないからだ。
寝癖の頭に無精ひげ、トレードマークは今どき珍しい黒縁眼鏡。
おまけに僕は人と馴れ合うのが苦手で、生徒とも必要以上に親しくしたりしない。
野暮ったい・無愛想・存在感ナシ。
これが、この学院での僕の総評。
まあ、僕自身がそれを嘆くような人間ではないから、別に良いのだけどね。
とにかくそんな僕だから、誰かに熱心に見つめられたりすることなんて滅多にないわけで。
でも、さっき感じたのが視線だとすると、かなり真剣に見つめられてたと思う。
チクチクして痛かったし……。
ていうか、視線って本当に感じるものなんだって初めて知った。
それにしても気になるな……。
あの視線は、誰のものだったんだろう?
いや、別に変な期待をしているわけではなくて。
一種の好奇心というか、なんというか。
それ以来、僕はいつも誰かに「見られている」気がするようになった。
つづく


2012年09月21日 Addicted To You 番外 トラックバック:- コメント:0
stare =2=
例えば――。
階段の踊り場で何気なく後ろを振り返ると、段差の陰に急いで隠れる「誰か」。
校庭を横切る僕の姿を、校舎の窓から眺める「誰か」。
授業を終えて教室を後にする僕の背中を、追いかけるように見つめる「誰か」。
視界の隅に見え隠れする姿で、それがこの学院の生徒で、しかも女子であることはすぐにわかった。
でも、一体誰なんだ。
「見られている」ことは確かでも、相手の正体は謎のまま。
僕も、隙あらば正体を突き止めようと、素早く視線を巡らせてみたりもするんだけど、そこは相手も結構すばしこいらしくて、なかなか姿を現さない。
そんなことをしばらく続けるうちに、僕の方もこのゲームが面白くなってしまって、今日はどこから視線を投げてくるんだろう、なんて楽しみに思うようになった。
なんかこう、変わり映えしなくて灰色っぽかった毎日に、少し色がついた感じだった。
はじめて「彼女」の全身像を見たのは、ほんの偶然からだ。
いつも通り、見られてるなあ、なんて後ろを気にしながら歩いていたら、前から来た男子生徒とぶつかってしまった。
相手が結構ガタイの良い生徒だったせいで、体当たりされた拍子に僕は数歩よろめいた。
なんて要領の悪い僕。
同時に、後ろで誰かが小さく「あっ」と叫んで、その声を聞いた僕は直感した。
今のは「彼女」の声だ、ってね。
咄嗟に声の方を振り向くと、果たして少し離れたところに女子生徒が立っている。
最初に目に入ったのは、驚いたように見開かれた瞳だった。
口元を両手で覆っていたから、顔の下半分は見えなかったけど、大きな瞳とそれを縁取る長い睫毛が印象的だった。
それから、脱色も染色もしていない黒い髪。
身体つきは華奢で、短いスカートから伸びた脚が小枝のように細かった。
眼が合うと、彼女は慌てて踵を返し、パタパタと上履きの音を響かせて逃げた。
逃げなくてもいいのに、と思ったが、かといって後を追うのも変な気がして、僕はその場に突っ立ったまま、彼女のうしろ姿を見送った。
少なくとも、彼女は僕の教えるクラスの生徒の中にはいなかった。
しかも、クラス担任を持っておらず、特定のクラブ顧問でもない僕は、生徒との接点が極端に少ない。
そんな中で、パッと見ただけの生徒の顔(それも眼から上半分だけ)と名前を特定するのは、かなり困難な作業に違いない。
それでも僕は、彼女の正体を知りたいと思った。
ゲームに勝ちたいという、意地のようなものもあったかもしれないが、それよりも何も、僕自身が彼女の印象的な瞳を忘れられなくなっていた。
ある日、授業の無い空き時間に職員室の窓から外を眺めていたら、偶然、体育の授業を受ける生徒達の中に彼女と思われる姿を見つけた。
「若い人たちは元気でいいですなぁ」
隣りに立った(確か古典の)望月先生が言った。
彼は、この学院でもう10年も教鞭を執る古参教師だ。
確か1年生のクラスも受け持っているのではなかったか。
「望月先生、彼女の名前、ご存知ですか?」
「ん? どの子ですかな?」
「ほら、あの……黒い髪の子、目立つでしょう?」
明るい色に染めた髪の生徒が多い中で、黒髪の彼女は確かに目立っていた。
同級生と組んでストレッチ運動をしながら、何やら楽しそうに笑い合っている。
いつも「見られている」側の自分が、こうして彼女を眺めているというのは、なんだか少し妙な気分だなと思った。
「ああ、御崎かな」
「みさき?」
「ふむ、1年C組の御崎柚月でしょう。彼女が何か?」
「いえ、別にどうという事は。今どき黒いままの髪なんて珍しいなと思いまして」
僕は咄嗟にでまかせを言った。
「そう言えばそうですなぁ。まあ、彼女の場合は髪だけじゃなく、生活態度もしっかりしていますがね。これも家柄でしょうかね」
「家柄、と言いますと?」
僕が聞くと、望月先生は打ち明け話をするような顔になった。
「この学院には良家の子息や子女が多く通っていますがね、その中でも御崎は格別ですよ。『MISAKI』という陶器メーカーをご存知ですかな?」
「はあ、有名ですから、一応名前くらいは」
「彼女はね、その『MISAKI』の一人娘なんですよ。息子なら御曹司と言ったところでしょうが、娘の場合はなんと言うんでしょうね?」
僕は本当に驚いた。
いや、驚愕を通り越して唖然とした。
「MISAKI」を経営する御崎家といえば、戦前は華族だった家柄だ。
財閥解体で爵位こそ失ったものの、今でも相当の資産家であることは、一般人の僕だって知っている。
彼女が、そんな御崎家の一人娘だとは。
「まあ、事が事だけに大っぴらには公表されていませんがね」
それはそうだろう。
VIPはとかく標的になりやすい。
それは良い意味でも、また悪い意味でも。
そこまで考えて、僕はふと疑問に思った。
何故そんな「深窓の令嬢」とも言うべき御崎柚月が、僕みたいな冴えない高校教師に興味を持つ?
いや、そもそもあの時の少女が御崎柚月だったという確信も無いんだけど。
それからも、少し用心深くなって、なかなかはっきりとは現れてくれない「彼女」の影は、いつもどこからか僕を見ていた。
つづく


2012年09月21日 Addicted To You 番外 トラックバック:- コメント:0